平林 岳
平林 岳
Takeshi Hirabayashi
大リーグ審判に再々挑戦!〜続・元パ審判 平林岳の奮闘日記 in USA
vol.9 Handling Situation Skil(04.03.23)
平林 岳 大リーグ審判に再々挑戦!〜続・元パ審判 平林岳の奮闘日記 in USA vol.9 Handling Situation Skil
皆さん、こんにちは。御無沙汰しておりました。昨年は、マイナーリーグへの配属の線から漏れて、“浪人”となってしまいました。
ということで今年はまた1からの挑戦となりました。1月3日に審判学校へ3回目の入学するため渡米し、5週間のカリキュラム(座学125時間、フィールド140時間)を20代前半の若者といっしょに必死にフィールドを駆け回りました。何とか156人の生徒の中からトップ25人の合格者に入ることができました。

そして、3月4日からのProfessional Baseball Umpire Corporation(マイナーリーグ審判を統括する組織)のランキングテストに参加してきました。
これは、アメリカに2校ある審判学校の合格者50人が集まり、実際に大学野球の試合を審判し、スーパーバイザーによる評価によって順位の良い者から配属されていくというしくみになっています。ひとりあたり大体5試合(球審3、塁審2)を査定されます。

今回のテストで自分にとって一番のハイライトは、最後に査定される試合での“退場”でしょう。自分でも完璧にルールに則ってマニュアルどおりにハンドリング(試合をコントロールする事)ができたと自負しています。

その状況は、無死走者1塁で打者がバントを試みたが、バットを引いたので私(球審)は、「Ball, No he didn’t go!(ボール、振ってない!)」と宣告し、キャッチャーから塁審に聞いてくれというリクエストがあったので塁審に訊ねました。「Did he go,Aaron?(アーロン、今の振ってた?)」「No, he didn’t go!(いや、振ってない!)」と塁審が応えました。ここで守備側の監督がダッグアウトから判定に対して抗議するために出てきました。

そこで、私は監督に「ストライク、ボールの判定に対しての抗議に出てくる事はできません。」と告げました。
監督は「ストライク、ボールに対してではなく、ハーフスイングについての抗議だ。」
私は「ハーフスイングに対しての抗議も最終的にはストライク、ボールに対しての抗議なのでだめです。」
監督は「そんなことはない。スイングだろう。」私は「それ以上近づいて抗議に来たら退場になりますよ。」と3度の警告にもかかわらず、さらに私のほうへ向かって来たので退場を宣告しました。

このパターンの退場が日本ではなかなかできなかったのです。ルールブックでも明記されていますが、慣習でそこまでは退場させていないのが現状です。(9.02(a)原注、(c)原注)
何か、胸の奥につかえていた物がとれたように、とてもすっきりとした気分になりました。

テストの最後に個人面談があり、各個人の評価を聞くのですが、その際に上記のような退場が評価され、「昨年よりEnglish Communication SkillとHandling Situation Skillがとてもよくなった。」といわれました。
結果は、50人中25番位で何とか今季は配属が決まり、6月のアリゾナ・ルーキーリーグで再スタートを切ることができそうです。

大リーグ審判に再び挑む37歳! 〜元パ審判 平林岳の奮闘日記 in USA
vol.8 3つの大きなミステイク (03.04.23)
平林 岳 大リーグ審判に再び挑む37歳!〜元パ審判 平林岳の奮闘日記 in USA vol.8 3つの大きなミステイク
このEvaluation Course では当然それぞれの審判を査定し、評価をつけていく場所です。わたしはここで3つの大きなミスをして評価を下げてしまいました。この結果不合格にはならないまでも今シーズンのスタートは一番最下位ぐらいからのスタートとなりそうです。プロの世界なので当然だとは思いますが、とても厳しいです。
このような世界とわかっていて、そしてそれに挑戦することに価値をみいだして決断した以上絶対負けません。下から這い上がります。

1つ目のミスは英語です。これは今回の自分に対して評価をするにあたってかなり重要視していたと思います。審判学校での授業中やここでの授業中の英語はかなり理解していたつもりでした。
でも細かい部分で大意から派生しているようなところで聞き逃していたり、理解できていないところはありました。そのようなところをことごとくスーパーバイザーから質問されてうまく答えられなかったのです。
試合中などでは特に英語で困ったりした場面はなかったのですが評価する人から自分の英語をためされていることに対して良い結果をだすことができなかったことは明らかに自分の負けなのでこれから更に努力していくだけです。
現在、アメリカで審判をしている先輩の内川君(2Aテキサスリーグ所属)の著書のなかに”1に英語、2に審判。”ということがかいてあるのですがまさにそのとおりだと強く実感しました。自分自身のなかに”試合で何とかなるのだから大丈夫だろう。”という甘えがあったのも事実です。とにかくがんばって英語のストレスがなくなるようにします。

2つ目のミスは日本で9年間審判をして身につけてしまった悪い癖、”打球を見る”ということです。
これは日本とアメリカとの審判方法での一番違うところだと思うのですが、アメリカでは打球が飛んだら打球ではなく野手をまず見て野手の動きから次のプレイを読めと教えられます。
日本では打球を見てそれに反応して判断すると教えられます。もちろん頭ではわかっていて切り替えができてるつもりだったのですが実際の試合のなかでそのような場面が起こると日本での体で覚えている癖がでてしまいました。
このことはこれからは、特に強く意識して実践で訓練していき、アメリカの方法を体に覚えさせていくしかないと思います。

3つ目のミスは本当に不注意なやってはいけないミスです。それはバットをフィールド内に置いたままプレイを続けていたのです。審判は常にフィールド内にグローブやバット、ヘルメットなどの用具を置き去りにしたままプレイをしないように注意を払っていないといけないのです。
その試合は最後は25対0というすごい試合で自分自身の注意力が欠けていたことは大いに反省しています。
1回の表にいきなり10点を取る攻撃が終わったところで見に来ていたスーパーバイザーに呼ばれました。”タケシ、君は大きなミスを犯している。見てごらんダグアウトの前を。”と言われ見てみるとバットが3、4本ころがっているではないですか。これには目の前が真っ暗になりました。弁解の余地がありません。完全に自分の不注意によるミスです。誰でも注意していれば防げること、やってはいけないミスのひとつだと思います。
その時決心しました。これから自分が審判をやめるまでこのような失敗は二度としないと。

この様な失敗によって自分のランクが下がったという現実はしっかりと受け止めて、自分の弱点をしっかり修正してシーズンが始まったらライバルをごぼう抜きできるようにがんばります。逆にそれ以外の部分では全然負ける要素がないという自信もついたので、メジャー審判になるという目標に対してはプラスになったのではと思っています。やりますよ親父審判。

大リーグ審判に再び挑む37歳!〜元パ審判 平林岳の奮闘日記 in USA
vol.7 Big League Spring Training(04.04.16)
平林 岳 大リーグ審判に再び挑む37歳!〜元パ審判 平林岳の奮闘日記 in USA vol.7 Big League Spring Training
自分の試合がない時間は基本的には自由時間になります。

自分はこの自由時間を使って是非やってみたいことがありました。それは、同じ場所フロリダで行われているメジャーリーグのオープン戦を観に行くことです。そして憧れのメジャーリーグ審判の仕事ぶりを生で見て、できれば何人かいるメジャー審判の友達に会うことができたらなあと渡米前から思っていました。
そして3日目にそのチャンスがやってきました。朝10時の試合に当たっていたので試合後すぐ着替えをしてそのまま隣町のモントリオールエクスポスがキャンプをしているメルボーンまで審判仲間のニールと出かけました。球場へ着くとすでに3回が終わったところでしたが、入り口から入り通路を抜けた後の眼前に広がった光景はまさに自分が憧れているメジャーリーグのフィールドそのものであった。
真っ青な透き通るような青い空、鮮やかな芝生のグリーン、オレンジに近い色で芝生の緑と素晴らしく良く合う土の色。ファンの歓声、球場の雰囲気、なにもかもが日本のそれとは一味も二味も自分にとって違うものなんです。何年かかっても必ずここでジャッジしたいと強く感じました。

その日はニューヨークメッツ戦でふと外野を見るとオレンジ色のユニフォームを着た新庄選手がセンターを守っていました。なんだかんだ言ってもこうやって彼もメジャーのフィールドに立って3年目。すごいことだと思います。この日も彼だけのために数十人の日本のマスコミ陣がフロリダの片田舎まで取材に来ていて彼の一投一打を追いかけていました。
アメリカ人も自分と会話をしていると必ず日本人メジャーリーガーの話題がでてきます。特に今年は松井選手のことをまず聞かれます。”彼の試合をジャッジしたことはあるか?””アメリカで活躍すると思うか?”など社交辞令のように必ずと言ってよいほど話題にのぼります。それだけアメリカでも注目度が高いです。オープン戦でも結果を出しているようだし、彼の場合は大丈夫でしょう。この試合を観ているあいだにもファンの人から声をかけられ”MATUI”評を求められました。これには、自分もびっくりでした。又、意外と彼の情報を知っているのです。これはいかにアメリカで松井選手の報道がされているかということだと思います。

そして試合後その試合に出場していたあるメジャー審判に会うことができました。その時も”松井はどんな選手だ?”ときかれました。ここでのどんな選手とい う意味は人間的にどうかという意味です。私は当然”Good guy!" と答えておきました。もし” Badguy!"とでもいっていたらきっと今シーズンは審判団からきついマークを受けることになるでしょう。

大リーグ審判に再び挑む37歳!〜元パ審判 平林岳の奮闘日記 in USA
vol.6 Evaluation Course の一日 (04.04.09)
このEvaluation Course が行われたのはフロリダ州のココア(Cocoa)という所にあるCocoa Expo Sports Centerという野球場が9面、ソフトボール場が3面、サッカーなどができる総合競技場が4面、体育館が1つからなる総合スポーツ施設でした。
宿泊施設や大きなバイキング形式の食堂(Cafeteria)もあり全米からありとあらゆるスポーツの団体が集まり知らないチーム同士が試合をしてそれぞれの競技能力を高めるといういかにもアメリカらしい合理的な施設 だと思いました。

野球でいえば、中学生ぐらいから短大生ぐらいまでのそれぞれのレベルのチームが何十チームも集まり、大体10日間ぐらい滞在して毎日2試合ぐらい同じクラスの他のチームと試合をします。試合のマッチングは施設のほうがやってくれます。お金を払ってここにくれば勝手に試合をたくさん組んでくれます。
このように組まれた試合を我々プロの審判としてスタートしようとしている金の卵達がジャッジするのです。前日の夕方にあるスーパーバイザーの部屋の窓ガラスに翌日の審判の割り当てがはりだされています。それを確認して当日試合にのぞむわけです。

試合は午前10時から夜の12時までとかなり時間帯が長いのでそれぞれの人によってかなり違いがあるのです。しっかり確認しておかないと時間を間違えたり、試合をすっぽかす可能性もあります。(さすがに誰もそのようなことはなかったです。)
一人一日1試合だけでした。球審と塁審を交互に当てられていました。試合だけではなくしっかり 授業もありました。毎朝8時から10時までは教室で講義をうけます。10時の試合に当たっている人は9時半ごろ授業を抜けることができますがその夜にしっかりと聞いていない部分の授業のビデオを見なければなりません。
野球の試合のほうはまれに短大のチームでプロ野球のスカウトらしき人がスピードガンを片手に試合をみてるような場合もありますがほとんどの試合は高校生レベルであまり上手な野球ではありませんでした。

あらためてここで強く感じたのは、審判をするのは野球のレベルが高いほうがやりやすいということでした。
野球が上手だと大体こちらの予測どうりにプレイが起こりますが、野球があまりうまくないとこちらの予想もしないようなとんでもないことが当たり前のように起こるのです。これは審判にとってはとても良い練習になります。とても難しいです。
ちなみに自分が球審した中学生の試合はスコアが25対0というすごい試合でした。どんなに難しかったか皆さんにも想像できますよね?